ご案内終了
蝦夷太刀拵(えぞたちごしらえ)
● 総長ー88.0cm ● 柄長さー23.4cm ● 鞘長さー64.5cm
アイヌの刀をイコロ(宝物)又は、エムシ(刀・帯刀・太刀)と呼び、アイヌ民族が儀礼の際に帯びていました。
儀式などの儀礼刀であったため、最初から刃を付けない場合や、刀身すべてが木製や竹製の物もあり、伝世品はほとんどが刀身を欠いています。儀式の際は肩から下げ、左腰の位置に提げます。
蝦夷拵とは、平安時代末期から室町時代頃までの間、武士に愛好された「蛭巻太刀」のような装飾性の高い拵を、アイヌの人々の好みに合わせて制作されたものです。 南北朝時代から18世紀頃まで、重要な交易品として蝦夷地に渡ります。 内地から輸入されたエムシをアイヌの人々は、宝物の第一位として敬い珍重しました。
蝦夷拵の特徴は、地金や地板(白銀や山銅)を、薄く打ち出した薄板に金鍍金した金具を設えた短い拵や、菊唐草・牡丹唐草金具などの薄い銀板で佩表を覆い、佩裏は簡素な造り込みの太刀拵などが現存しています。
本作は下地に黒漆を塗り、その上を三巴・桜花紋を凸凹状に打ち出した白銀地を、のし包み状に鞘に巻き付け、拵え全体に覆輪を施しています。 鐔は真鍮地に波千鳥図、柄前も白銀地を、のし包み状に巻き付け、麒麟図と牡丹図の蝦夷目貫が二個付きます。(目貫一つ欠損)
鞘は足金物が二箇所・責金が三箇所つき、白銀に施された色絵の輝きは、長い年月を経て変色し、その質素な色合いは、日本文化特有の美意識へと繋がります。その美を求めて江戸時代は逆輸入し、鑑賞の対象としてきました。 蝦夷拵は現在、国立博物館と北海道大学植物園に2点、えりも町郷土資料館に2点、民族共生象徴空間に数点が伝世しており、アイヌ文化を未来に伝えるための貴重な資料となっています。